結婚相談所の利用を躊躇する人のうち「ふつうの恋愛結婚ができない」ことを理由として挙げる人がどのくらいいるのか、私は知らない。ただしいわゆる「ふつうの」恋愛結婚と異なることは事実であり、結婚相談所ならではの出会いの特殊性は間違いなく存在する。結婚相談所と比較される対象としてマッチングアプリの存在がある。結婚相談所の利用に対して心理的、あるいは経済的ハードルを感じてまずはマッチングアプリを、という人も婚活界隈では多いのではないだろうか。マッチングアプリは、いわば出会いのプラットフォームであり、自然に近いかたちで出会うことができる。
マッチングアプリにおける恋愛と結婚
マッチングアプリの方が着手ハードルも低い。スマホにアプリをインストール・会員登録すればすぐに利用できる。月額利用料も安価だ。マッチングアプリの普及する前の時代と比べれば、同アプリもまた出会いの特殊性が存在すると言えるかもしれない。しかし携帯電話が普及し、友達の紹介で出会うケースと比べれば似たようなものだろう。友人が紹介してくれるか、アプリのプラットフォームがその紹介機能を果たしてくれるかの違いでしかない。互いに「良いかも」と思えばテキストでのやり取りを開始し、話が盛り上がれば会う約束をして、更にそこでも気が合えばデートを重ねて恋人関係になる。きわめて自然に近いかたちの「恋愛」が存在していると言える。そこから結婚に至るかどうかは、条件が折り合うかどうか次第だろう。マッチングアプリでの出会いは通常の恋愛と同様、少々込み入った情報開示や価値観のすり合わせは関係を深めるにつれておこなわれる。例えば婚歴の有無などはマッチングアプリ上で開示の義務はないし、年収についても第三者が証明するものではない(網羅的に確認したわけではないが筆者はそう理解している)。出会いを求めるにおいて不都合な情報は隠そうと思えば隠すことができる。事後的にネガティブ情報が開示される可能性もあるわけだ。
加えて、結婚への考え方も会員によってさまざまだ。たくさんの人に会ってみてもし良い人がいれば結婚しよう、くらいのスタンスの人もいる。結婚への考え方について温度差があると、関係性を発展させるのは難しくなる。特に都会であれば選択肢(会員)はたくさん存在しているため、結婚への温度感が同程度の人を見つければ良いだけの話なのであるが、マッチングアプリではこの点についてのバラツキがあるということを読者と認識共有する趣旨で記載している。
マッチングアプリでの出会いについてポイントをまとめると下記のとおりだ。
・自然に近いかたちで出会うことができる
・いわゆる、ふつうの「恋愛」を実現できる(恋愛結婚が可能)
・お付き合い後のクリティカルな情報・価値観開示リスクが存在する
・結婚への温度感は会員によってばらつきがある
結婚相談所での結婚は機械的・打算的なのか
記事の本題とズレるため詳述しないが、一口に結婚相談所といってもいろんなタイプがある。大きく2つに分けるとするとするならば、自走型と伴走型だ。自走型はマッチングアプリに近いものだと認識してもらえば良いだろう。伴走型は結婚相談所職員がいろいろと世話を焼いてくれる、手厚いサポートのあるタイプだ。こちらは昔ながらの結婚相談所をイメージしてもらえれば良いかもしれない。
いずれにおいてもマッチングアプリと異なるのは、対面で出会う前に条件によるスクリーニングがある点だろう。つまり、原則として設定した条件をクリアした人とのみ対面するかたちとなる。そして基本的にファーストコンタクト(初のリアル対面)前にテキストでやり取りすることはない。プロフィールに記載されている以上の情報はない状態でファーストコンタクトに臨むことになる。そのコンタクトで互いにもう一度会ってみたいと思うなら仮交際に進み、これがいわゆる「お友達」ステージだ。「交際」という言葉はついているものの複数人同時並行で進めることができる。この間に結婚できる相手かどうかを見極め「真剣交際」に駒を進めていく。「真剣交際」が「付き合う」ステージと同等だと言える。
結婚相談所での出会いの特殊性は、希望条件によるスクリーニングと事前のやり取りなしでのファーストコンタクトにある。経済的負担の話は、自走型と伴走型のどちらを利用するかによっても大きく異なるためいったん横に置いておきたい。さて、先に挙げた2つの特殊性ゆえに、結婚相談所を介しての結婚は「恋愛結婚」ではなく、どこか機械的あるいは打算的な結婚に結果的になるのではないかという不安を抱く人もいるだろう。結婚相談所を利用する人の中には、相手に対して求める譲れない高条件を掲げ、それをSNSで発信する人もいる。そういったものを見ると、希望条件さえクリアしていれば誰でも良いのではないかとも思えてくる。スクリーニングをかけた結果としてビーカーに落ちてきたボールの色はすべて同色に見えているのではないか、と。スクリーニングの結果ボールが落ちてこないケースもある。その場合はボールが落ちるようになるまで条件を緩和していくのだが、その様子はやはり打算的に映る。自身が損しないギリギリのラインを攻めるには、ということに強く執着しているように思えるだろう。
でも、果たしてそうだろうか。結婚相談所を介して結婚する人は毎年たくさんいる。全員が機械的・打算的なプロセスを経て結婚していくのだろうか。もちろん初期的なスクリーニングは避けることができない。しかしファーストコンタクトの後だけを切り取れば、一部結婚相談所ならではの制約はあれど、通常の恋愛とそう大きくは変わらないと筆者は見ている。
結婚相談所に恋愛を求めるのは間違っているだろうか
筆者も結婚相談所を介しての結婚を経験したうちの一人だ。あくまで「n=1」のサンプルでしかないが、結婚相談所を利用して交際してみての感想は「意外とふつうの恋愛と変わらないじゃん」ということである。仮交際期間中は何回かデートをし、テキストでのやり取りをして関係性を深めるプロセスを経た。結婚のボトルネックとなるクリティカルな情報はあらかじめ開示されているため、何度目かのデートで「実は〇〇なんだ、、、」と相手にとって衝撃的な情報をぶつけることもない。
あくまで筆者の経験上という域を出ないが、結婚相談所経由での結婚に「恋愛結婚」などあり得ないという認識は誤っていると考える。短期間でいろんな異性と出会ったが、仮交際に進んでからは相手を恋愛対象として見ることができるかどうか、という点を重視している人が多いように思えた。筆者は年齢の割に年収が高く、人並みにコミュニケーション能力があり、清潔感も一定程度備えていると自負しているが(自分で言うと説得力に欠けるが…笑)、交際を切られることもあった。実際のところ何を理由に打ち切られたのかは不明なのだが、思い返せば恋愛している時に感じるわくわく感のようなものはお互い欠けていたように思う。そのあたりの雰囲気は女性の方が敏感に感じ取るかもしれない。
筆者は最終的に今のパートナーと出会って結婚したわけだが、その交際期間は筆者自身がそれまでの人生で経験した「恋愛」となんら変わりなかった。さらに、結婚相談所の会員は「結婚をしたい」人が大多数を占める(残念ながら全員ではない)。結婚相談所上の「真剣交際」に進むということはすなわち「結婚を前提に付き合う」ということだ。とりあえず付き合ってみたけど結婚はまた別の話、結婚は1年後かもしれないし2年後かもしれない、なんてことはない。仮に真剣交際でそれが発覚した場合即交際打ち切りとなるであろう。
以上を踏まえて、結婚相談所での出会いのポイントをまとめると次のとおりだ。
・条件によるスクリーニングがある
・テキストなどでの事前コンタクトなしで対面する
・仮交際以降はふつうの「恋愛」が可能
・お付き合い後のクリティカルな情報・価値観の判明リスクは低い
・結婚を前提としたお付き合いができる
ここまで読めば理解していただけると思うが、結婚相談所に恋愛を求めるのは間違っていないし、マッチングアプリよりも合理的にコトが進むぶん忙しい人には向いているのではないかと思う。筆者の場合は激務業界に身を置いているため時間的な制約があった。マッチングアプリも楽しくはあったが、直接会える確約もないまま毎日複数人とやり取りをするという時間的コストが非常に負担であった。そのため、結婚相談所のシステマチックな出会いは魅力的だった。更にはもっとも不安に感じていた「恋愛結婚ができるのか?」という点もなんら問題なかった。恋愛結婚ができないことを不安視し、最後の砦として結婚相談所をとらえている読者がいるのであれば考え直してみてほしい。結婚相談所は決してマッチングアプリでうまくいかなかった人が集結する場ではない。マッチングアプリと並列にある選択肢として見るのが適切だということをお伝えしたい。
おわり
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